第三章 王国の人々

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 雪は抗議するものの、多数決では仕方ない。彼らは左の扉を開け、次に歩み進んだ。  入った先は、また同じ構造の短い通路で、先に部屋が見える。  ただ、通路を塞ぐように、魔傀儡が剣を構えていた。  無貌の人形兵士が、ゆっくりと勇者一行へ近づく。 「友好的には見えないな。お前らは部屋に戻れ!」  鞘を握り、蒼一は雪たちを庇うように立って、人形を待ち受けた。  その隙に、今しがた出たばかりの扉を雪が押し開けようとするが、戸はピクリとも動かない。 「開きません!」 「先に行きたきゃ倒せってことか」  人形の得物は両刃のロングソード。接近戦で来るなら、蒼一にも分がある。 「粘着、粘着っ!」  彼は敵の足を固め、肩や肘にも白い粘着物を放ち、その自由を奪った。 「鞘突き!」  高速で突き出された鞘先が、謎の金属製の胴の中心にぶち当たる。  ガンッという大きな衝突音と共に、人形は腰を頂点にして二つ折になった。人間では有り得ない、背中側に、だ。 「なっ!?」  身体を逆に折り曲げたまま、魔傀儡は上半身を捻って固着した腕ごと剣を振り回す。  予想外の方向からの剣撃は、蒼一の右手先を掠め、鮮血が飛び散った。 「ソウイチッ!」 「大丈夫、かすり傷だ」
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