第三章 王国の人々

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 バックステップで距離を取り、彼は傷口に毒薬を掛ける。 「毒反転……やりづらい相手だな」  なまじ人の形をしているため、却って攻撃の方向が読みにくい。  粘着を重ね掛けして安全を確保すると、蒼一は鞘をボウガンに持ち替える。 「正攻法は、こっちか」  彼はボウガンに矢をセットし、傀儡の肩を狙って連射した。  思った以上に頑丈なこの機械の兵士も、魔力で強化された矢を何本もは受け切れない。  右肩に三本目が当たった瞬間、青い魔光を発しながら、その関節が砕けた。 「おらっ、追撃だ」  ボウガンの銃座が、敵に打ち据えられる。 「重撃! 墜撃っ!」  左肩、右膝。多少の反撃をものともせず、蒼一は関節ばかりを狙い続けた。 「連環撃!」  接合部を次々に強打された傀儡は、破片を撒いて機能を停止する。  崩れ落ちるその姿は、正に糸が切れた操り人形のようだった。 「イ人連中より強いな、こいつ」  回復歩行で足踏みしつつ、彼は傀儡を見下ろす。  短時間で倒せたのは、蒼一が戦闘に慣れ、スキルを使い(こな)せるようになって来たからだ。  この世界に来たばかりの彼なら、逃げるしかない相手だった。  人形の残骸の横を抜け、三人は奥の部屋へ向かう。
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