第三章 王国の人々

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「魔法陣、ねえ」 「転移するやつみたいです」  部屋には扉も壁画も見当たらず、床に魔法陣だけが彫り込まれている。  紋様の中央には、細身の人型のシルエット。 「飛んだ先がゴールか? 人形を運んでこよう」  メイリは何か言いたそうに魔法陣をチラチラと見ているが、先の魔傀儡を運ぶなら彼女の力も要る。人形の身体は重く、蒼一だけで運ぶのは困難だ。  彼が首、雪とメイリが両腕を抱え、ズルズルと通路を引きずった。  ちぎれそうな関節から光が漏れ、細かな部品が落ちる。  何とか陣の上に人形を投げ出し、蒼一は額の汗を手で拭った。  程なくして、魔法陣の紋様に力が流れ、発動光が点る。 「よし、行こう」  勇者から順番に、光る陣の上に立つ。  転移は瞬きする間も無く行われ、急に明るくなった周囲に彼は目を細める。 「ここは……?」  突然現れた勇者へ、盛大な歓声が湧き起こった。 「ケンマッ、ケンマッ、ケンマァァーッ!」  狂乱の生首踊りが、祠を囲んでヒートアップする。 「おー、すごく楽しそう」 「ここまで帰るのかよ! イモジンとイノジンなんて誤差の範疇だろ」
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