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三人は再挑戦の前に昼食をとることにして、遺跡攻略へ向け作戦を練り直した。
◇
祠は街路の脇に有り、小さな社を鉄柵で囲んだだけの簡素な扱いを受けていた。
呪いの噂が伝えられていたことを考えると、昔も遺跡による失踪事件があったのかもしれない。
なぜ地下遺跡の存在が今は知られていなかったのか、それはギルドの調査待ちだ。
ともかくも、十八番目の勇者が訪れて以来、この一角は様変わりする。
飴屋を中心に屋台が並び、ちょっとしたイベントスペースと化していた。空き家を潰し、祠公園を作る計画も有るらしい。
蒼一たちは屋台の一つで、固焼きパンに厚切りのハムを挟んだ軽食を購入する。
やたら増設された屋外ベンチの空きを探していた雪は、祠近くで立ち止まる蒼一に呼び掛けた。
「蒼一さん、こっちですよ! 席を譲ってくれました」
「ああ、今行く」
三人は雪を中心に並んで座る。ホットドック状のパンを片手に、雪が尋ねた。
「祠に何かあったんですか?」
「いや、考えてたんだよ。位置関係とか」
彼は墓地から地下遺跡への道を頭の中で再現し、地上での位置をシミュレートしていたのだった。
「おそらく、だけどな。遺跡から伸びる通路は、この祠の下に向かってると思うんだ」
「ここから墓地まで、結構ありますよ?」
「そう。だから、あのクイズ通路、まだまだ続くんじゃないかな」
通路が続くということは、クイズも次があるということだ。
「勇者の間の壁画、メモを取ろう。文具屋で用具が売ってたな」
陽光に照らされる街角は、地下の遺跡とは別世界であり、ついさっきまでの格闘が嘘のように思える。
暫し、昼の休憩で脳の疲れを癒し、食事に専念した。
メイリが食べ終わるのを待って、彼らは通りの反対側にある文具屋へ向かう。
「また邪魔するぜ」
「いらっしゃ……ひっ!」
店の主人が、椅子から転げて這い逃げる。
「おい、今日は客だ」
主人は蒼一の方へ向き直り、しゃがんたまま両手を合わせた。
「反省しております! 御慈悲を!」
「何を反省するんだ。顔か? 俺は買い物したいんだよ」
「ゆ、勇者に殺される―っ!」
「…………月影っ!」
「ソウイチッ!?」
度重なる勇者の狼藉に、メイリが目を白黒させる。
「いやあ、なんかウザくなってきて、つい」
「オジサン、マモマモ言ってるよ!」
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