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しょうがないなあ、と、彼は藻掻く主人の手を掴んで座らせた。
「どうしたもんかな。んー、浄化!」
「蒼一さん!?」
老人は大人しくなり、目を閉じたまま静かに立ち上がる。
「ほら、治った」
「そりゃそうですけど、何か白いのが出てます!」
「ありゃ、年寄りだと、半分成仏するのか」
抜け出しかけたエクトプラズムを戻すため、蒼一は主人の肩に手を置いた。
「気つけっ」
「もうちょっと! まだ口から餅みたいなのが見えます」
「気つけっ!」
主人の身体が跳ね、また床に座り込む。
入魂完遂を確認すると、勇者はメイリに主人の介抱を頼み、自身は買い物に取り掛かった。
「メイリ、オヤジに回復薬を飲ませといて」
「う、うん」
「雪はメモ用紙を。俺は携帯用のペンを探す」
墨壺とペンを組み合わせた一体型の携帯筆記具を見つけ、蒼一は代金に銀貨を数枚カウンターに載せる。
「紙代と合わせても、たっぷり釣りが出るだろ」
「一応、迷惑掛けた自覚はあるんですね」
失敬なと反論しつつ、彼は店を後にする。
「お金はいりませぬ」と店主は言っていたが、浄化の効果が残っていたせいだろう。
「魂って喉に詰まるんだな。気つけが有効、と」
「食べられるんですかねえ。餅味?」
「メイリに聞いてみろよ。魂っぽいの詰めてたぞ」
モチは食べたことないよ? と少女は首を傾げる。
墓地へ向かう道中の話題は、誤飲事故と地球の食べ物についてだった。
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