第三章 王国の人々

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「二つ目はイヌジンだ。えーっと、正解は……あれ?」 「左右どっちもイヌジンだよ」  同じに見える二つの絵の違いは、雪が指摘してくれた。 「犬の表情が違います。右は悲愴な顔、左は怒り狂う顔」 「細けえなあ! そこまでメモってねえぞ」 「私は覚えてるから大丈夫。正しいのは、哀しみのイヌジンです」  一問目でも最初から女神は正解していた。蒼一たちは逆らわず、素直に右を選ぶ。  三問目からは部屋の順序もランダムになり、難易度が上がった。 「ああ、これは七番目の部屋だ。メモにある。蛇が十二匹が正解」  数合わせだと、彼のメモが真価を発揮する。  記憶力のいい雪に、観察眼の鋭いメイリ。バランスのいい三人は、どんどんと奥へ歩を進めた。 「おちょくられてるイガジンは七匹」 「左ですねえ」 「カエルが口から出してるのは、舌じゃなくて内臓」 「右だな」 「分かった、右のクラーケン、脚が一本少ない!」 「よう気づくわ。この世界のイカは脚が十八本もあるんだ」  最終十番目の部屋は、例題と同じ順序に戻り、勇者が倒した魔王の上に立つ構図の絵だ。  多数の魔物の屍が、その主人公の周りに描かれている。
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