第三章 王国の人々

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 そう、二つの扉は、両方が開いている。  怪訝な面持ちで、蒼一は扉の先に顔を突っ込んだ。 「ああ? 何だこれ。メイリも覗いてみろ」 「うん……」  彼と同じように、少女が顔だけを通路に伸ばすと、こちらを見る蒼一と目が合う。とりあえずメイリは笑顔で手を振った。 「どっちでも一緒じゃねえか! 紛らわしいっ」  三人は奥に入り、広がる地下空間を見渡す。  ここまでの遺跡の中で、最も高い天井と広い床。規則正しく並ぶ柱も、数えるのが面倒なほどだ。  この大広間には光苔もランプも無いが、青い光が満ちてかなり明るい。  床そのものから、魔光が漏れ出ており、水中にいるような幻想的な雰囲気が生まれていた。  部屋の中央を真っ直ぐに歩いて行くと階段状の台座があり、乗用車ほどの広さのその台の上に、下から照らされた細い身体の人影が立つ。 「宝の守護者か。魔傀儡だな」  雪たちを後ろに留め、蒼一はボウガンを手に台座に近づいた。  接近すると、その傀儡が、今までのものとは造りが違うことに気付く。  黒く滑らかな金属製の身体は、プレートが重なるように表面が構成され、人形というより鎧に見える。 「全く動かないな……」
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