第三章 王国の人々

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 ボウガンの狙いをつけたまま、彼は徐々に魔傀儡との距離を詰めた。  ほんの数メートルまで来ると、その人形の特殊さがよく分かる。  身長は人の半分ほどの小ささで、奥行きが無く、平べったい。板金を組み合わせたような姿だ。 「蒼一さーん、何かありましたか?」 「お前ら、危ないぞ」  いつまでも始まらない戦闘に、雪たちも様子を見にやって来た。  四角い台座にはその人形と、その横に円い石盤タブラだけが存在した。いや、もう一つ、人形の後ろにはお馴染みの転移陣も刻まれている。  微動だにしない魔傀儡を狙うのは止め、蒼一はボウガンの筒先を下げた。 「この石盤は俺にも読める。“我が友をここへ安置する。また求められし、その日まで”」 「盾があるってことでしたよね?」  盾らしき物どころか、この広い空間にあるのは、守護者と石盤だけだ。 「この人形が、“我が友”ってことか?」 「そうデス」 「でも、盾じゃないしなあ」 「盾って比喩的な意味なんじゃないですか?」 「…………」  蒼一たちの会話を聞いていたメイリが叫ぶ。 「ぎゃあぁ、しゃべったあーっ!」 「デカい声出すなよ、うるさい!」 「ギャアァァー」 「お前も真似するな! ……!?」     
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