第三章 王国の人々

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 直立する黒い傀儡の正面へ蒼一は移動して、人形と目線を合わせるためにしゃがんだ。 「君、喋るの?」 「ワタシ、シャベル」 「俺、勇者、分かる?」 「アナタ、ユウシャ」  雪に顔を向け、彼は感心したように報告する。 「こいつ優秀だわ。これが宝具かな」 「そうです、ワタシが宝具デス。よろしくお願いシマス」 「ペラペラ喋れるんじゃねーか!」  第三勇者が地下遺跡に残したのは、黒い魔傀儡であった。  宝具が喋るなら、話は早い。  蒼一たちは、しばらくこの傀儡を質問攻めにした。 ◇ 「お前は誰に作られたんだ?」 「二代目の女神様デス」  女神の巻物を広げ、雪がその内容を確認する。 「二代目……機巧の女神がそうですかね。機械いじりが得意って意味でしたか」 「得意なんてレベルじゃねえけどな。しかし、行儀悪いぞ、寝っ転がるなよ」 「床がライトなんで、こうしないと読めないんです」  彼女は仰向けに寝て、歴代女神の記録を読んでいた。  勇者の書同様、巻物の記述も曖昧だ。  機巧の女神が三代目か二代目かは、この黒傀儡のおかげでやっと判明した。
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