第三章 王国の人々

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034. 魔術師の受難  墓地内に居たヤースは、外から現れた蒼一たちに、慌てて走り寄った。 「勇者様、いつの間に外へ?」 「この手のやつは、最後に祠へ戻されるんだ」  ギルド職員は十人以上が作業をしているが、フードで頭を隠している者もいる。  それに対し、施設長は堂々とその禿頭を晒していた。 「立派なもんだ。スッキリしたな」  勇者が何の話をしているかは、その視線で分かる。 「抵抗はありましたが……話を伺い、その理由に感銘を受けたのです。若き女性たちのためなら、頭髪など!」 「それ、あっちで睨んでる奴にも言い聞かせといてくれ。って、あれネルハイムか」 「彼は婚約者の家に挨拶に行く直前でしたので……」 「それを言ってくれりゃ、モヒカンで許したのに」  ヤースによると、街が保管する古文書に、いくらか地下遺跡についての記述があったらしい。  さすがのギルドの調査力でも、一朝一夕でそれ以上はっきりとした成果は出ない。  更なる報告は後日に期待して、勇者たちは宿へ帰った。  夜は蒼一の部屋で人型に戻ったロウの話を聞き、五百年近い昔に思いを馳せる。     
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