第三章 王国の人々

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 魔傀儡への充電、正確には充魔には相当量の魔力を消費したらしく、会話の間中、雪はモグモグと口を動かしていた。  メイリは彼女のために、飲み物を用意してやる。 「ロウの話だけでは、もう一つ、帰還のヒントにならねえな」 「二代目は任務途中で亡くなられ、三代目の最期は存じマセン」  部屋に持ち帰った夕食が無くなると、雪は買い込んだ勇者飴を食べ始めた。  蒼一の顔をちぎりながら、彼女も話に参加する。 「その勇者さんたちも、地球から来たんですよね?」 「それも答えかねマス。ただ、初代の勇者は、王国の王子と聞いていマス。魔物に王都を破壊され、今の場所に遷都したそうです」 「そんな話、マニュアルに載ってないぞ」 「二代目の記憶はワタシも混乱していて……三代目も王家の一族のハズ」  どの代についても、勇者の書に召喚時の情報は無く、特に最初の三代は圧倒的に全ての記述が少ない。  ロウの言葉が真実なら、勇者とは、この世界の人間が生んだ存在だ。  では、召喚を始めたのは誰だ? 「お前、顔からして記憶力がいいだろ。また見て欲しい地図があるんだ」 「あまり期待シナイデ」 「……顔ってありましたっけ」  雪がしげしげとロウの滑らかな頭部を観察する。
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