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勢い良く開いた入り口に、サナが現れる。二階の窓から訪問者を確認した彼女は、急いで駆け降りて来たのだった。
「助けてください!」
「いや、もう助けたよ? 髪を生やすのは、さすがに俺も無理」
「違います、私じゃないんです」
周囲を気にするように、サナは蒼一たちを引き入れると、店の奥から二階へ案内した。
「私が帰ってすぐ、父が暴れ出して……」
二階の一室はサナの父、カイル・ワイギスの書斎で、壁には魔具や魔法に関する蔵書が並ぶ。
窓際に机と椅子、そして部屋の中央には、荒縄でグルグル巻きにされた父親が床に転がっていた。
カイルは頭に傷を負っており、床の血痕は彼のものだろう。
「娘を見て首を締めようとしたので、後ろから花瓶で殴ったんです」
皆の後ろから、母親のハイネが顔を出した。
「目を覚ました後、つい先程まで暴れていて……」
一応、治療しようとした跡はあるものの、本気で殴ったらしく意外と傷は深い。
カイルの容態を調べた蒼一は、メイリに回復薬を用意させた。
「日頃の恨みも混じってるんじゃねえのか。薬、飲ませられるか?」
「うん、やってみる」
少女と場所を交替し、彼はワイギス母子に向き直る。
「娘か出家したんで気が触れたか、もしくは――」
「もしくは?」
「きゃあっ!」
蒼一たちの会話は、メイリの悲鳴で中断された。
仰向けにされ、口に当てていた布を外されたカイルは、少女の手に噛み付こうとしたのだ。
目をひん剥き、唸る父親は、正気を保っているようには見えない。
「これ、やっちまってもいいよな? 浄化っ!」
「ぐるぁっ!?」
カイルの身体から分裂するように、人型の黒い影が起き上がる。
「やっぱり、そういう類いか。ほら、浄化っ」
影は形を失い、人魂のように空中を飛んで、勇者の連続攻撃を避けた。
彼は鞘打ちもすかさず繰り出したものの、煙状の影相手には手応えがない。
三発目の浄化が放たれる前に、黒い人魂は家の壁をすり抜けて外に逃げる。
「クソッ、物理無効かよ。うぜえ」
蒼一の左手の盾がパタパタ展開し、ロウはその脚で床に降り立った。
「霊体の魔物、ファズマ。三代目も苦戦された、難敵デス」
変形した傀儡の顔を見たメイリは、槍を手元に引き寄せる。
「ロウから離れろっ! この悪霊め!」
「ヤ、ヤメテ、メイリさん……」
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