第三章 王国の人々

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「じゃあ、あんなのが何匹もいるんですか?」  人に取り付く魔物は、確かに難敵だと思われた。特に、このような人口の多い街を徘徊されると。 「悪霊の弱点とか知らないか?」 「ファズマは、人の弱った心に住み着きマス。三代目は光魔法を得て、ようやく退治シマシタ」 「俺の浄化みたいなやつだな」 「ソックリの技デシタ。さすが勇者様デス」  霊特化のスキルだと、取る奴も少なかったんだろう。浄化が残っていて助かった。 「また囮を使うかなあ」 「えーっ、また私?」  メイリが口をへの字にして不満を表明する。 「いや、今回はメイリは使えない。お前は悩み性だけど、案外ポジティブだしな」  褒められたのかどうか分からず、少女は微妙な笑顔を作る。 「どうしてもって言うなら、頑張るよ」 「その頑張るってのが、対悪霊には駄目なんだよ」  もっとこう、ネガティブに振り切った奴がいい。娘がいなくなったと思ったら、スキンヘッドで戻ってきたカイルみたいに。  ギルドに到着すると、ヤースと見知らぬ若い女性が話しているところだった。  高級そうなレースの飾りの付いた肩掛けを羽織る、見るからに良家のお嬢様だ。
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