第三章 王国の人々

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「もちろんです! ネルハイムのあんな姿は、心が痛みますわ、ふふ」  今、笑ったよね? そう問いかけて、蒼一は言葉を呑み込む。  作戦自体は、上々の滑り出しだ。苦手と感じたローゼも、案外、自分とウマが合いそうな気がした。  この後、ネルハイムを尾行するのに、この婚約者も参加したいと言う。  職員の衣装と着替えてもらい、蒼一たちと合わせ、四人で魔術師の後を追った。  婚約を解消され、クビを言い渡された彼の足取りは重く、周囲に気を配る余裕も無い。  尾行の難易度は、これ以上ないくらい簡単なものだった。 ◇  ギルドを出たネルハイムは、下を向いて街路を北に歩いて行く。  蒼一とローゼ、雪とメイリの二班に分かれ、仕掛人たちは少し離れて彼を追跡した。 「あいつは、家に帰ろうとしているのか?」 「違いますね。こっちはネルハイムの好きな公園のある方向です」  ナムス家の所在は街の中央西、北には小さな池のある公園があるらしい。 「公園ねえ。落ち込んでるのを鳩にアピールか」  この世界の公園に鳩はいない。     
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