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だが、挟むパンは逆に通常より小さく、持ちにくいことこの上ない。
難儀しながらも、袋からハム部分を出し、ネルハイムは大きく口を開けた。
「ああっ、せっかく持ちにくくしたのに!」
「任せとけ、木枯らしっ!」
突風が昼の公園ベンチを襲い、魔術師は思わず目を閉じる。
再び彼が手元を見た時、そこには固く焼かれたパンだけが残されていた。
地面にベッチャリと落ちる、通常品の倍はあろうかという厚いハム。公園を縄張りにする白ワゾールたちが、そのご褒美を見逃すはずはない。
一斉に舞い降りた数十の鳥が、ネルハイムの大好物を脚とクチバシで取り合った。
「ああ、ああぁーっ!」
この日、婚約者と、職と、厚ハムを失った男の哀しき呻吟が、長閑な公園に染み渡る。
ベンチからずり落ちたネルハイムは膝立ちし、鳥に囲まれながら、パンを齧った。
抑え切れなくなった涙が、パンを塩辛く味付けする。
「大したもんだな。厚ハムの威力」
「私の時より悲壮感があるのは、後で説教ですわ」
いつの間にか合流した雪とメイリも、茂った葉の間からネルハイムを眺めていた。
「また蒼一さんは容赦無いですねえ」
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