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036. 勇者の結婚
ネルハイムが意識を取り戻すと、ローゼと蒼一に全てが狂言だったとバラされる。
「そういうこと、でしたか……」
心の平穏を取り戻した魔術師だったが、一日掛けて受けたショックは大きく、意気消沈したまま帰路についた。
本来この日は、ユレイカル家で義理の家族と晩餐の予定だったのだ。
正式な婚約予定が流れたことに、蒼一も多少、気の毒には感じていた。
ネルハイムの婚礼は、彼の気力が髪の毛と共に復活するまで待つしかない。
街中の悪霊がいなくなると、ワイギスの蓄魔器屋もようやく営業を再開する。
浄化パレードの翌朝、蒼一たちは開店直後の店を訪れた。
「いらっしゃいませ、ああっ、勇者様!」
店に立つのは、後頭部に布を当てた父親のカイルだ。
「頭は大丈夫なのか?」
「はい、もう痛みはありません」
「いや、中身の方なんだけど……正気みたいだな」
彼の来店を聞き付けたサナが、奥から顔を出す。彼女は赤いバンダナを頭に巻き、工作用の作業服を着ている。
親子は二人揃って、勇者へ改めて礼を述べた。
「そんな何度も頭を下げなくていいよ。今日は客で来たんだ」
「何なりとお申しつけ下さい」
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