第三章 王国の人々

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 蒼一はメイリについて簡単に説明し、魔力の放出を抑えられるかを尋ねる。 「蓄魔器を利用すれば可能ですが、その人に合った物を使わなければ、意味がありません」 「眼鏡みたいなもんだな。どうすればいい?」 「奥に魔力の計測室があります。そちらへどうぞ」  蓄魔器は魔力を溜め込み、一時的な力の増強に使用される魔具だ。何度も再利用できるので、魔力の弱い者の補助具として求められることが多い。  蒼一たちは計測室に通され、やや緊張するメイリの測定を見守る。  床に塗られた足型の印の上に立ち、少女は壁に吊された検査表を見るように指示された。 「……これ、視力検査じゃないよな?」 「表が輪っかなのが、余計に眼医者さんみたいです」  雪の言うように、検査表にはランドルト環、アルファベットのCに似た記号が向きを変えて並んでいる。 「上から順番に読み上げてください」 「えーっと?」  戸惑うメイリに、雪がアドバイスした。 「空いた所の向きを言えばいいんです。上とか、右とか」 「あっ、はい……上、下、こっち、右、あっち……」  斜めは言い辛いらしく、少女は指で方向を指し示す。 「……こういうとこが、子供っぽいよな」
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