第三章 王国の人々

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「蒼一さんは、下まで見えますか?」 「おう、一番下は右斜め下だろ」  メイリも最後まで問題無く読み切った。  この結果にカイルは何やら納得が行かないらしく、難しい顔をする。 「どうした、オヤジ? 全問正解だろ。ちょっと簡単過ぎたな」 「いや、勇者様はそれでいいのです。これは魔力適性が高いほど、表の下まで読める仕組みです」  記号は魔力を帯びた特殊なインクで書かれており、普通は上の数段しか見えないらしい。  メイリが下まで読んだということは、彼女は勇者並みの魔力反応力を持っていることになる。 「こういうのは、珍しいのか?」 「珍しいどころか、この国に何人いるかという話で……」 「ほう」 「ここまで適性が高いのは、大賢者様や勇者様、後は魔物くらいしか……」 「いらんこと言うと、黒霊にもう一回取り憑かせるぞ」  蒼一の射竦(いすく)めるような視線に、カイルは慌てて言い繕った。 「そ、それくらい稀だと言うことです。次は魔力保有量を調べてみましょう」  サナが注射器状の器具を、陶器の皿に載せて運んで来る。  メイリの顔色が、みるみる青くなった。 「な、何をされるの?」 「採血じゃね?」     
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