353人が本棚に入れています
本棚に追加
反対に雪とメイリは、婚礼ドレスを興味深そうに見物している。
この地方の婚礼衣装はカラフルで飾りが多い。
高級品には宝石まであしらってあり、女性の目を惹くには十分だった。
「失礼しました。早とちり致しまして」
カラリヤが丁寧に謝罪する。
「分かればいいんだ」
「ご婚約相手は、あちらの娘さんの方でしたか」
「何でそうなる」
カイルの書状には、勇者と少女のために指輪を用意しろと記してあった。
「オヤジ、ちゃんと理由も書いとけよ!」
店主は勇者に相応しい指輪を出すと言って、ろくに話も聞かず、店の奥に引っ込んでしまう。
カラリヤが帰ってくるまで待つしか無く、その間、雪はドレスの試着を始める始末だった。
蒼一が若い店員を捕まえ、指輪について説明させた。
「指輪には色々な種類がございまして、やはり貴重な宝石のものが人気です」
「そうじゃない。メイリの魔力を補充したいんだ」
少し首を捻った後、店員は勇者の希望する指輪に思い当たる。
「絆の指輪ですね! 魔力を共有する婚約指輪があるんです」
お互いの魔力や体力をリンクさせる共有の魔法。発動条件が厳しいそうだが、それを使えば蒼一の魔力をメイリに流せるらしい。
最初のコメントを投稿しよう!