第三章 王国の人々

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 反対に雪とメイリは、婚礼ドレスを興味深そうに見物している。  この地方の婚礼衣装はカラフルで飾りが多い。  高級品には宝石まであしらってあり、女性の目を惹くには十分だった。 「失礼しました。早とちり致しまして」  カラリヤが丁寧に謝罪する。 「分かればいいんだ」 「ご婚約相手は、あちらの娘さんの方でしたか」 「何でそうなる」  カイルの書状には、勇者と少女のために指輪を用意しろと記してあった。 「オヤジ、ちゃんと理由も書いとけよ!」  店主は勇者に相応しい指輪を出すと言って、ろくに話も聞かず、店の奥に引っ込んでしまう。  カラリヤが帰ってくるまで待つしか無く、その間、雪はドレスの試着を始める始末だった。  蒼一が若い店員を捕まえ、指輪について説明させた。 「指輪には色々な種類がございまして、やはり貴重な宝石のものが人気です」 「そうじゃない。メイリの魔力を補充したいんだ」  少し首を捻った後、店員は勇者の希望する指輪に思い当たる。 「絆の指輪ですね! 魔力を共有する婚約指輪があるんです」  お互いの魔力や体力をリンクさせる共有の魔法。発動条件が厳しいそうだが、それを使えば蒼一の魔力をメイリに流せるらしい。     
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