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「その何とかの女神っていうの、もしかして、この表紙に書いてあるやつかな」
ブラブラと巻物をつまんで持ち上げる彼女に、蒼一が尋ねた。
「なんの女神なんだ?」
「雪の女神」
「お、いいじゃん。ブリザードとか使えるのか?」
彼女は首を横に振る。
「違うと思う。名前ですね、きっと」
「名前?」
「赤坂雪、よろしくね」
雪がヤケクソ気味に微笑んだ。
――本名かよっ! 雪の女神じゃなくて、女神の雪じゃねえか。
心でツッコミを終えると、彼は真面目な顔で、最も大事な質問をする。
「それ、目的も書いてあるんだろ、何だって?」
雪は巻物を開き直し、最初の部分をトントンと指で叩く。
「これ」
「俺には見えん。読んでくれ」
息を深く吸った彼女は、キッパリと宣告した。
「『帰れ』」
「アホか、ホントに帰りたいわっ!」
この国の神官長らしいライルが、話を締めにかかる。
「王国としても、援助はいたします。旅の資金と、装備をお渡ししましょう」
「ちょっと待て、なんで旅に出る前提なんだ?」
「八番目以降の勇者様は、皆さん大賢者様の元に赴かれております。きっと貴方様の助けになるかと」
それが既定路線なのだ。
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