第一章 勇者

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「その何とかの女神っていうの、もしかして、この表紙に書いてあるやつかな」  ブラブラと巻物をつまんで持ち上げる彼女に、蒼一が尋ねた。 「なんの女神なんだ?」 「雪の女神」 「お、いいじゃん。ブリザードとか使えるのか?」  彼女は首を横に振る。 「違うと思う。名前ですね、きっと」 「名前?」 「赤坂雪(あかさかゆき)、よろしくね」  雪がヤケクソ気味に微笑んだ。  ――本名かよっ! 雪の女神じゃなくて、女神の雪じゃねえか。  心でツッコミを終えると、彼は真面目な顔で、最も大事な質問をする。 「それ、目的も書いてあるんだろ、何だって?」  雪は巻物を開き直し、最初の部分をトントンと指で叩く。 「これ」 「俺には見えん。読んでくれ」  息を深く吸った彼女は、キッパリと宣告した。 「『帰れ』」 「アホか、ホントに帰りたいわっ!」  この国の神官長らしいライルが、話を締めにかかる。 「王国としても、援助はいたします。旅の資金と、装備をお渡ししましょう」 「ちょっと待て、なんで旅に出る前提なんだ?」 「八番目以降の勇者様は、皆さん大賢者様の元に赴かれております。きっと貴方様の助けになるかと」  それが既定路線なのだ。     
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