とりかえ長男

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 ここでは仮に春子さんと呼ぶその女性の生家は、戦前祖父が興した商売を長男である父が継ぎ、親族一同で経営を支える商家であった。店の並びには羅城門跡址を囲む小さな公園があり、通りを進むと都の鎮護である東寺に到る。  祖父は困窮から裸一貫で商いをはじめたと聞くが、以前はそれなりに栄えた家だったという。いまは学校や病院の建つあの土地この土地も、もとは××家のものだったのに、と祖母はよくこぼしていた。祖母の恨み滲む目はいつも穀潰しの男を射殺していた。当の男は庭の厠そばに建てられた粗末な小屋で寝起きし日中はどこぞへとふらふら出歩いていた。
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