とりかえ長男

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 腹のなかで羅城門をくぐった子は鬼となるという迷信のとおりに、先に生まれた子は長じて一族の財を食い潰した。怪しげな投資話に次々騙され、選挙神輿に担ぎあげられ棄てられ、あっというまに莫大な借金をこしらえた。祖父がいまの商売を興しようやく食べていけるようになってからも、厠横の小屋でこそこそと朝鮮人参の輸入売買に手を出していたらしい。あの異様な若さはあるいは朝鮮人参の効用なのか、それとも鬼たるゆえんなのか。  春子さんの生家の蔵には、いまも男が遺した朝鮮人参のビラが山と積まれ朽ちている。
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