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「あれ?わかんない?本当に?」
「わかんねぇって。雨の日限定ってこと?」
「……わかんない人いるんだ。」
そう言って朱莉は目を丸くしながら、すぐさまカウンター越しの柊平の顔を見つめる。朱莉と目が合った柊平は静かに笑うと洸平に向かってこう言った。
「友達と水族館に行くんだって。」
「へぇ、水族館か。で?何でそれが雨の日だからなんだ?」
相変わらず不思議そうな顔でそう言う洸平に朱莉はまたすぐに言葉を返す。
「え?水族館て雨の日に行くんじゃないの?
小さい頃に晶がそう言って雨の日によく連れてってくれてたんだけど……」
はぁ?と洸平はまたも頭にハテナマークを浮かべながらも晶ならそんな風に言うかもしれないなと思った。きっと晶独自のルールだったのだろう…まぁ室内だし、雨の日にってのはわからなくもねぇけど。それにしても、しっかりと朱莉に晶イズムが継承されている事に驚き、思わず笑みが零れる。
「なんつーか……晶らしいな。」
「そうなの?よくわかんないけど。じゃぁ私そろそろ行ってくるね!二人で楽しい休日を~!」
二人で……の所でやけに意味深な笑みを浮かべながら朱莉はそそくさと出て行った。
二人で楽しい休日をって言ったって柊平には店がある訳だし、俺はただここに来ている客な訳だし。何をするって事もないだろう。でもまぁこの雨じゃ客足は遠のくだろうけど……。不意に窓の外で降りしきる雨に視線を移し、ぼーっと眺めながらカウンターに頬杖を付いた。
「この雨じゃ今日は一日暇だろうな。」
「ん?まぁこれだけ降っていればな……梅雨だし仕方ねえよ。」
「こんな雨の日に来てくれてありがとう。予定とかなかったの?」
柊平は手元のグラスを丁寧に磨きながら、洸平と同じように窓の外を見やった後、またすぐにグラスへと視線を戻し静かにそう言った。
この質問は意味のあるものなのか?それともただ純粋に聞いているだけなのだろうか……。
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