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少しだけ考えた後、素直に答えることにした。
「外の空気が吸いたくて……雨だったから、外に出たの」
「雨だったから?」
「うん」
少しの間の後、高田くんが笑った。
「なんか、カタツムリみたいだね」
その言葉に、私はなるほど、と目を瞬かせた。
確かに、雨の日にしか出掛けない私は、カタツムリだ。
「……ねえ。学校、来ない?」
再び、高田くんがそう言った。
「みんなも反省してるし。もし何か言ってくる奴がいたら、僕がどうにかしてやる。僕が味方になるって約束するから、学校、おいでよ」
そんな言葉に、私はまじまじと高田くんの顔を見返した。高田くんはニッコリと笑った。
「待ってるから」
私はカタツムリに目を向けた。いつの間にか、隣の葉先まで移動している。ゆっくりしたスピードだけど、確実に進んでいる。
「……急がなくて、いいからさ」
そう言った高田くんの目もカタツムリに向けられていた。
ゆっくりと、ゆっくりと前に進むカタツムリ。
「……うん」
私は小さく頷いた。
気が付けば、雨はもう止んでいた。
了
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