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私は立ち上がって大きく息を吸った。
「……探し物、何?」
「え?」
「さっき、探し物してるって言った」
高田くんは一瞬ポカンと口を開けて私を見上げたけれど、すぐに立ち上がって、苦笑しながら頭を掻いた。
「家の鍵。昨日、弟が落としてきたらしくて。その本人は熱出しちゃってさ。僕が母さんに『探してきて』って言いつけられた。こんな土砂降りに弟の尻ぬぐいさ。――あ、ちなみにこの傘弟の。僕の趣味じゃないよ、断じて」
言われて、改めて高田くんの傘を見る。
鮮やかな青。そこに、ワンポイントの柄が入っている。……控えめでおしゃれに見えるけど、よくよく見れば、それはアニメのキャラクターだった。
さすがにちょっと笑ってしまった。
「僕の、学校に忘れてきちゃってさ。――君は、何か用事でもあったの?」
今度は逆に聞き返された。
「こんな雨の日に出掛けるなんてさ」
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