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「あ……」
傘を持った人が、私を見て目を丸くした。
私の目も、きっと同じくらい丸くなっているに違いない。
同じクラスの、高田くん。
「ひ……ひさしぶり、だね」
高田くんはそう言って立ち上がり、ひきつったような、困ったような笑顔を私に向けた。
私は顔を隠すように俯いた。
どうしてここに入ってしまったんだろう――後悔でいっぱいだった。
「あの――」
高田くんが一歩私に歩み寄った。私は咄嗟に後退り、そのまま体の向きを変えた。
話したくない。今すぐ帰りたい。
「ちょっと待って!」
その呼び声に身が竦んで、止まりたくないのに、足が勝手に止まった。
「あ……ごめん――でも……ねぇ、ちょっとこっち来て?」
語り掛けてくる声が少しだけ柔らかくなる。つられるように、私は恐る恐る振り向いた。高田くんはホッとしたように息を吐いて、私に笑いかけてきた。
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