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「――ほら、ここ見てごらんよ」
高田くんは、植え込みに咲いているアジサイを指差した。満開に咲く薄紫。
「ほら。ここ、ここ」
私は少しだけ迷った末、高田くんの方へ近付いて、彼の指が差した所を覗いてみた。
「あ……」
そこには、三センチぐらいの大きな殻のカタツムリがいた。緑の葉っぱの上を、ゆっくりと動いている。
「おっきい……」
私は思わず呟いていた。
「だろ? さっきここで探し物してたら、偶然見付けたんだ」
高田くんはまたしゃがみこんで、カタツムリを間近から眺めた。
「こいつ、2、3年ぐらい生きてるんじゃないかな」
「え……そんなことわかるの?」
つい聞き返してしまう。そんな自分に驚いて慌てて口を手で覆ったけれど、高田くんはそんな私の焦りなど気付きもせず、振り向かないまま頷いた。
「殻にスジがあるだろ? これ、越冬したあとなんだって。こいつ、二つスジがあるから、二回冬越したってことで……ほら、ここ。わかる?」
カタツムリの殻を指さされ、ちょっと迷った末、私も高田くんの横にしゃがみこんだ。立ったままじゃ、その「スジ」はよくわからなかったから。
「あ……ほんとだ。スジがある……」
「ね? でも僕もそこまで詳しいわけじゃないから、それが確かかどうかはわからないけど」
高田くんはそう言って、誤魔化すように笑った。
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