第二章 漂流と救助

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「ふう。さてと……」  久しぶりの食事を終えて、少女が双眼鏡を手に取った。 「今日も今日とて、変わり映えなしか……」  一面に広がる海原に、少女が溜息をつく。   少女の視線の先は、見渡す限りの青色が広がっていた。  ともすれば、空と海の境目すら分からない程である。  この二週間、船はおろか島影にすら少女は出くわさなかった。  それどころか、海鳥の一羽すら見かけない。  これはすなわち、近くに陸地がないことを意味している。 「はあ……」  ため息をつきながら、少女は当て所もなく水平線を覗き続けた。  水の備蓄は残り僅かである。  食糧はともかくとして、これだけはどうにもならない。  乾きは死に直結する以上、少女は焦っていた。  人間は食糧が無くとも三週間は大丈夫だったりするが、水が無ければ三日と保たない。 「あの時、敵に降りておくべきだったかな」  少女は後悔した。  しかし、すぐに「いやいや」と首を振って、邪念を振り払う。  情け容赦なく、味方を塵殺した敵である。その様な輩に身を預けたところで、先は見えていた。 「何を弱気になっているのだ私は……」  気を持ち直して、少女がもう一度双眼鏡を覗く。  その時である。 「あれ?」  少女の視界に何かが映った。  遠くのそれは、奇妙な物体であった。  平面ばかりで構成され、言ってみれば歪な多面体である。  白いそれは前後に細長く出来ており、かろうじて船と見えた。  慌てて、少女が脱出艇に潜り込む。  次に出てきた時、少女の手には信号拳銃が握られていた。 「それっ!」  躊躇なく、少女が引き金を引く。  煙の尾を引いて、光弾が天に昇っていった。  だがしかし、船は少女に気づく素振りを見せない。  そのまま船は、見当違いの方向へと進んでいく。 「くそっ!」  少女が悪態をつく。  まさしく千載一遇のチャンスである。  少女は肉体的にも、精神的にも限界であった。  事態は一刻の猶予も許されない。 「気付いてくれ!」  少女は残弾を惜しまず、全て撃ち尽くすことにした。 「頼むっ!」  最後の弾を撃った直後、船首が少女の方を向いた。 「やった! おーい、ここだ! ここだ!」  少女は上着を振って、船に呼びかけた。
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