ゆらゆら

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夜7時過ぎ、家の近くを歩いていると街灯の下に人影が見えた。 その中年女性は空を仰ぎながらゆらゆらと前後に揺れていた。 私は内心恐怖に駆られながらも素知らぬふりをして通り過ぎた。 鞄の中に手を突っ込んで鍵の感触を確かめながら早足で駆け抜け、急いで自宅に入る。 そこでほっと安堵の息をついた。 夕飯を食べ、風呂でリラックスすると、先程までの恐怖心が薄れてきた。 丁度恋人から電話がかかってきたので、ちょっとした話題として先程の話をした。 「えー、ちょっと怖いね」 「でしょ。何だったんだろうあれ」 談笑混じりに会話を楽しんでいると、唐突に玄関のチャイムが鳴った。 インターホンの通話ボタンを押すと、甲高い声が早口で捲し立てた。 「今、私の話してましたよね?」
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