「俺への当てつけ?」

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「そんな綾瀬にちょっと頼みがあるんだけど」 「なんでしょうか?」 マグカップを数え終え、隣に置いてあるコースターの枚数を数えながら声だけで店長に返事をした。 店長の目を見れないのはなんだかちょっとだけ嫌な予感がするから。 「再来週、彼女の誕生日でSAKURAでなにか買いたいんだけど、お客さん女性ばかりでひとりだとちょっと入りにくいんだよ」 ほらね。 「詳しい綾瀬に一緒に行ってもらって、オススメの商品とか色々教えてほしいんだけど。もちろん日程は綾瀬の都合に合わせるし」 「……」 店長の方は見ずに、コースターを置いて正の字を書く。自分でもびっくりしたけれど視界がジワリと滲んだ。 いくつになったって恋をすることは難しい。歳を重ねたら重ねた分だけ相手の心が読めたらいいのに。臆病になっていくばかりだ。 すーっと、息を吐き出してカラッとした声を作る。 「もちろんです!一緒に行って、彼女さんに素敵なプレゼント選びましょう!」 「頼もしいな、ありがとう!」 にっこりと口角を上げて、店長に微笑んでみせた。私にはそれしかできない。 「じゃあ、いつなら大丈夫か後で教えて」 「はい!」 「じゃ、俺ちょっとストックルームの在庫整理してくる」 「……はい」 泣きそうな震えた声なんて、出すわけにはいかない。 店長の背中を見送って営業が始まるまで無心で目の前の商品の在庫を数えた。
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