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「大袈裟ですよ、いいの買えるといいですね」
「ありがとう」
彼女さんは、幸せだ。本当に。
そんな会話をして、香澄といつも歩く道を今日は森坂店長と歩いた。土曜日だから人は少ないが、ブランドショップの並ぶ通りは私たちの店の近くよりも人口が多い。しかも、カップルっぽい男女ばかり。
「そういえば綾瀬も近々誕生日じゃなかったか？」
「え、」
突然、冬の冷たい風に流されて聞こえてきた声音に次の言葉を見失った。
「あれ、ごめん違ったっけ？」
「あ、いえ、１ヶ月後に一応誕生日です……」
「一応ってなんだよ」
「え、それより店長なんで知ってるんですか？」
「あぁ、店で働いてくれてる子の誕生日は覚えてるよ。それに俺がこっちの店に異動してきてすぐ、店で綾瀬の誕生日祝いやっただろ」
「あ、」
まさかそんなことを覚えてくれていたなんて思ってもみなかった。完全な不意打ちに冷たい空気の中で反抗期みたいに熱くなる私の顔。
「また、店のみんなでお祝いしような」
「え、ありがとう、ございます」
嬉しい。純粋にそう思った。重たかった気持ちが少しだけ晴れて軽くなる。
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