「覚えてない?ふざけるな」

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『森坂店長、もしかして彼女さんと電話ですか?』 『そう、実は今日彼女が千葉から遊びに来るんだ』 けれど、期待とは真逆の言葉に思わず「え」と音を漏らした。 『あれ、森坂店長、彼女いないって……言ってましたよね?すみません、私が冗談で聞いたから店長ふざけてます?』 『いや、お客さんに聞かれた時はいないって答えてるんだ。前の店舗の時に彼女いるって言ったら根掘り葉掘り聞いてくるお客さんがいて、参っちゃって』 まさかの事実に、私の恋は無惨に散った。 千葉支店にいた時から付き合っている彼女らしく、いままでお客さんに彼女がいないと言っていたのを知っていたスタッフたちは、あえて店長に彼女がいるのか?と聞く人がいなかった。 スタッフには別に秘密にしていたわけではないらしいが、なにも聞かれないし、店長も茶化されるのが嫌で特別自分から彼女がいるなんて報告はしていなかったらしい。 それもそうだ。店長の性格からして「俺、彼女いる!」なんて言い出すような感じではない。 「どんな人なんだろうね、森坂店長の彼女さん」 「千葉支店にいた時の常連のお客さんだって言ってたよ」 香澄の問いかけに答えながら私服に着替え終え、ため息を吐きながら、丸い小さな椅子に力が抜けるように腰を下ろした。
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