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そのまましばらく、不覚にも佐倉さんの腕の中で泣き続けた私の顔は、きっと見るに堪えないくらいぐちゃぐちゃで。
どうやって帰ろう。こんな顔で電車なんてと、冷静に思っていれば頭上から優しい声音が降ってきた。
「とりあえず、落ち着いたか?」
「……あ、えっと、はい」
「寒いから中、戻るぞ」
「え、でも私こんな顔で……SAKURAのお店に入るのは……ちょっと……」
「従業員用の裏口から入れば問題ないだろ」
有無を言う隙さえ与えてはもらえず、私の肩を抱いて佐倉さんは歩みを進める。誘導されるがまま私は足を動かした。
ふと、こんなにも私とは住む世界の違う素敵な人がどうして私なんかをと改めて思う。
瞼が腫れて重たい。どう考えたってこんな不細工な女、佐倉さんには不釣り合いなのに。こんなに良くしてもらう義理ないのに。
お店の入り口とは逆に進めば、表に見える煌びやかな建物には不釣り合いな錆びた鉄の扉を、慣れた手つきで佐倉さんは開いた。
「入って」
「従業員じゃないのに、いいんですか……?」
「社長がいいって言ってるんだぞ」
なんというパワーワード。「失礼します」と小さな声で呟き足を踏み入れる。
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