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慣れた様子で廊下を進む佐倉さん。先ほどの鉄の扉とは違い、何やらおしゃれな装飾の施された扉の前で止まる。
扉に書かれた文字にごくりと思わず唾を飲み込んだ。
そんな私にお構いなしな佐倉さんは、私を拘束していない右手でスラックスのポケットから鍵を取り出すとそれを鍵穴へ入れる。
いやいや、ここはさすがに私が入っていい場所ではないのでは?と、扉を開けて入って行こうとする彼へ、少しの反抗の気持ちを込めその場で足を止めた。
「なに?早く入って」
「いや、あの、このお部屋って、」
「俺の部屋」
「……ですよね」
だって、扉に“社長室”って書かれてましたもん。と自分の見た文字の羅列と佐倉さんの言葉を照らし合わせて答え合わせ。そして、正解してしまった。
憧れのSAKURAの裏側に潜入し、ましてや社長室だなんて。本当にこの人がSAKURAの社長であることを突きつけられた。
「私が言うのもなんですが、私みたいな一般人にこう会社の裏側とか社長室とか、見せていいものなのですか……?」
「別にいいだろ。てか俺は……、あー、いやなんでもない」
「……なんですか?」
「いいから早く入れ」
なにかを言いかけてやめた佐倉さん。ぐっと右手を思い切り引かれて力で敵うはずのない私は前に躓きながら、無理やり社長室に足を踏み入れさせられた。
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