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「その腫れた目で帰るの嫌だろ?」
「……はい」
「じゃあ、大人しく俺の言うこと聞いとけ」
この顔で帰るのは嫌、です。嫌だけど。と口籠もっていれば佐倉さんはお構いなしに部屋に入ると扉を閉めた。
広い室内。どうしていいか分からず立ち尽くす私の前にはローテーブルがひとつと、それを挟んで置かれたふたり掛けの黒いソファがふたつ。
その奥にはきっと佐倉さんが仕事をするであろうパソコンが置かれたデスクがあった。
それだけ。失礼かもしれないけれど、なんとも殺風景な部屋。社長室って、もっと高そうな絵とか置き物とかがあるんだとばかり思っていた。社長室らしかったのは入り口の扉くらいだ。
「とりあえずソファに座って」
「……はい」
借りてきた猫状態の私を黒いソファに誘導した佐倉さんはデスクの後ろにある黒いドアを開けるとその先へ消えて行った。
「……あ、」
取り残された私は革張りのソファに恐る恐る座り、思わず声を漏らす。
視線の先に、この部屋にはいささか不釣り合いな見たことのあるポスターが貼ってあったから。
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