「覚えてない?ふざけるな」

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店長には結婚まで考えている人がいる。 「香澄、私いい人探す!」 「え、立ち直り早くない?」 「吹っ切れてはないから、まだ時間はかかるけど。なんか冷静に考えてみたら、恋っていうより憧れに近かったのかもって思った。学生時代、かっこいい先輩に憧れてキャーッて言ってた時みたいな」 「あー、懐かしい」 私の例えに「分かる、分かる」と頷きながら自分が学生時代憧れていた先輩の話を始める香澄。 よくよく考えればまだ営業中で仕事中なのに彼女はここにいていいのかななんて思いつつ、香澄の昔話が楽しくて聞き入っていれば、コンコンと扉を叩く音がした。 「あ、やばい。あたしまだ仕事中だった」 「なにサボってるんだって、呼びに来たんじゃない?」 こちらに向かって開いた扉。それを開けたのは一緒に働いている1歳年下の美空(みそら)ちゃん。 「失礼します」 「美空ちゃん、ごめんすぐ戻るから店長には内緒にして」 「あれ、香澄先輩またサボってたんですか?」 「またとは失礼な」 「すみません。でも私、香澄先輩を探しにきたのではないので安心してください。店長にも言いません」 そう言って香澄ににこりと微笑んだ美空ちゃんは、じっと私を見つめると「あー、ちょっと遅かったですね」となにやら残念そうにため息を溢した。
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