「なずなの花言葉って知ってる?」

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どうしたって、いまの私にこんな素敵なプレゼントは不釣り合いだ。 「佐倉さん、すみませんこれはお返しします」 「なに、気に入らなかった?」 「いえ、大好きなSAKURAのとても素敵な商品だと思います」 「なら、」 「だから、ダメなんです。せっかくいただいたものを返すのも失礼なことは分かってます」 「……じゃあ、そのまま」 「ダメです。だってそれ以上に私みたいに中途半端な奴がもらってしまったら失礼なんです。SAKURAにも佐倉さんにも」 「中途半端って、あの男がまだ好きだから?そんなのべつに気にすることないだろ」 「気にします!……だって佐倉さん泣いてる私に言ったじゃないですか、“本気で好きだから幸せを願いたい。でも、好きな気持ちはそんなすぐには消えない。適当な気持ちじゃなかったってことだろ”って」 自惚れかも知れないけれど、そんなことを言ってくれる人が適当に“初恋”なんて、きっと言ったりしないでしょ。 あの日、自分のことを覚えてさえいなかった私に、好きだと言ってくれたのは本気で思ってくれていたからでしょ。 だから“私のために作った”と言ってくれたこれを私は受け取れない。 「だから私は、私の心に森坂店長がまだいるのに、」 「……」 「佐倉さんとお付き合いすることは……できません」 「……」 「……」 「俺が、それでもいいって言っても?」 「ダメです。だって、私を好きだと言ってくれた佐倉さんをこれ以上、私の勝手で傷つけたくない」 己の両肘を腿につき前に重心を預けた佐倉さんは覗き込むように真剣な眼差しで、こんな身勝手で醜い私を見つめる。 「たとえばを考えるんです……。森坂店長がもし、いまの彼女さんと上手くいってなくて、でも森坂店長はまだ彼女さんが好きで、そんな時に私が気持ちを伝えて付き合えたとしても森坂店長が見ているのは彼女さんで、私はたぶん身代わりになれるだけなんじゃないかって。だったら、」 「……」 「本気で気持ちを伝えた私に、本気の気持ちを返してほしいって思っちゃったんです。それが断りの返事でも、本気でぶつかった甲斐があるなって私なら思うんです」
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