「僕、諦め悪いので」

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《ではまず、これまで佐倉社長はテレビ取材を断ってきたとうかがっているのですが、今回出演してくださった特別な理由があればぜひ教えていただきたいです!この番組にとってはすごく嬉しいことでして、》 《そんなに大層な人間ではないので、そう言っていただけて大変恐縮です。理由は番組にはだいぶ失礼なものなのですが、大丈夫でしょうか?》 《失礼?と言いますと?》 《んー、“悪あがき”ですかね》 《それはどういう意味ですか?》 《この番組に出演オファーをいただいたとき、最初はいつも通りお断りしようと思っていたのですが、 “SAKURAの社長”という肩書き以前に僕もただの男でしてどうにかして好きな人を振り向かせたく、こうして出演をさせていただいてます。 とてつもなく私用で申し訳ないのですが、全国放送の電波を利用させていただき、その相手に少しでも気持ちが届いたらいいなと》 《え!これはもしかして佐倉社長の恋のお話が聞けるということでしょうか!?しかもいまの感じだと、もしかして佐倉社長の片想い……?》 《そうなんです。もうずっと片想いで》 「ねぇ、ちょっとなずな!!これって!!」 「いや、そんなわけ…………ないよ、」 慌てた様子の香澄がこちらに振り向きながらテレビ画面を指さす。そんなわけないと思いつつ、私の心臓はどくどくと加速していく。 まさか、ね。 《ずっとですか、》 《はい、そうなんです。実は小学生のときからずっとなので、もうかれこれ18年くらいずっと片想いです》 ほら、私じゃない。だって私は小学生の時に佐倉さんに出会ってなどいないもの。 《佐倉社長のような素敵な方に思われて、その方はとても羨ましいです》 《いえいえ、実は彼女にはすでに振られておりまして》 《え、そうなんですか?》 《というか、この話長くなりますけど大丈夫ですか?僕としては全国放送で流していただけて嬉しいんですけど》 《ぜひ!佐倉社長の恋のお話はきっと、全国のSAKURAファンの女性が興味津々だと思いますので!でも、ブランド立ち上げのお話、新商品についてのお話もできたらおうかがいしたいのですが、》 《では大丈夫ですね。ブランドの立ち上げも、新商品発売もその女性のためなので》 アナウンサーに向かってにっこりと笑った佐倉さんが、一瞬カメラを見た。まるで佐倉さんと視線が交わったみたいで変な汗が出る。
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