「僕、諦め悪いので」

12/16
前へ
/97ページ
次へ
小学1年生の私は自分の“なずな”という名前が花の名前であることをまだ知らなかった。 中学生になって、なずながぺんぺん草だということを知ったときは、衝撃的だったけど。 友達のさくらちゃんの名前が花の名前であることは、お花見に連れて行ってもらったときに『あのお花は桜って言うんだよ』と親に聞いたことがあったので知っていた。 だから桜がピンク色の可愛い花だということはもちろん知っていて、可愛いさくらちゃんにとても似合う花だと思っていた。 だから純粋に本人に伝えたことがある。 『さくらって、かわいいなまえでいーな』 『そーお?なずなもかわいいじゃん!』 『さくらのほーがかわいいよ!ピンクいろのお花』 ーーそうだ、さくらちゃんに聞かれたんだ。 テレビに映る佐倉さんをぼんやり見つめる。 「香澄、私思い出した。小学生のときにさくらちゃんっていう女の子に“1月17日はなずなの誕生花だよ”って教えてもらって、」 「女の子?誕生花?」 「そう!さくらちゃんっていう、すごく可愛い年上の女の子がいて」 「え、」 「その子に“なずなの花言葉って知ってる?”って聞かれたことがあるの!」 「え、待って!じゃあ、なずなが女の子だと思ってたその子が、佐倉さんだったってこと?」 「たぶん。いや、絶対。いま佐倉さんが話してた子供のときの話で完全に一致した……」 ある日、さくらちゃんの家に遊びに行ったときに、さくらちゃんはお母さんに買ってもらったという1冊の本を見せてくれた。 その本にはいろいろな花の写真が載っていて、幼いながらに綺麗だと思ったのを覚えている。 本を見せてもらいながら私はそのとき初めて自分の名前が花の名前であることを知った。 そこに花言葉と誕生花の日付が書かれていたんだ。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

457人が本棚に入れています
本棚に追加