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『なずなちゃん、1月17日はなずなの花の日なんだって!』
『どういういみ?』
『たんじょうか?っていうのがあって、1月17日はなずななの!』
『だから、ケーキたべるの?』
『ケーキ?』
『うん!1月17はケーキたべる日!』
『じゃあ、たんじょうびなんだよ!なずなちゃん!』
『たんじょうび?』
『そうなずなちゃんが、うまれた日!』
『そーなんだ!』
『それとね、それとね、ねぇ、なずなちゃん。なずなの花の、花ことばってしってる?』
『え、花ことばってなーに?』
『おかーさんにおしえてもらったんだけど、お花には、そのお花につけられたことばがあるんだって』
『なずなって、お花なの?』
『そうだよ!』
『そーなの!じゃあ、お花のなまえだから、さくらちゃんといっしょだね!』
可愛いさくらちゃんと、自分の名前が同じ花の名前というのが嬉しかった。
私の中で溢れる昔の思い出をなぞるように、テレビの向こうでは佐倉さんが同じ思い出を音にする。
《ということは、佐倉社長は昔から美男子だったということですね!》
《小学生に美男子はちょっと恥ずかしいですね。でも、僕も幼かったので可愛いって言われたり、さくらちゃんって呼ばれることにそのときはあまり抵抗はなくて、なんなら佐倉って名前でよかったなと思えることがありまして、》
《なんですか?とても気になります》
《僕の好きなその子の名前が花の名前なんですよ。で、その子が花の名前だから一緒だねって言って喜んでくれて、幼い僕はそれがすごく嬉しくて。可愛いなと、そのとき胸を鷲掴みにされました》
香澄がテーブルに乗り出しながら私の顔を覗き込んでくる。そんな香澄の食べかけの親子丼はカラカラになっていた。
「て、ことはやっぱり、佐倉さんの初恋の人ってなずなで合ってたんじゃん!覚えてないなずなが悪い!」
「え、いや、でもだって、気づかないよ……、女の子だと思ってたんだよ!」
「あ、そっか」
「ちょっと、突然の事実すぎて、頭がついていかないんだけど、」
パキッと水の入ったペットボトルの蓋を開け、とりあえず落ち着こうと体内へ水を流し込む。
そんなこと、ある……?
あのさくらちゃんが、佐倉さんだったなんて。
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