「僕、諦め悪いので」

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『なずなちゃん、あのねさくら、てんこうすることになったの』 『うん、ままからきいた』 『なずなちゃんはさみしくない?』 『さみしくないよ!またあえるでしょ?』 『そうだね……また会えるよぜったい!』 そう言いながら、なぜかさくらちゃんが悲しそうに笑っていたことは覚えている。 再びペットボトルの水を喉に流し込む。 一気にあの頃に記憶が戻されて幼い私の心無い言葉にどうしようもなく申し訳なくなって、同時に恥ずかしくなった。 『あのね、花ことば』 『花ことば?』 『そう!このまえはなしたやつ!なずなの花には“あなたにわたしのすべてをささげます”っていういみがあるんだよ』 『ささげます?って、どーいういみ?』 『あなたにわたしのすべてをあげるよってこと』 『へー、そうなんだ!じゃあ、さくらちゃんは?』 『さくらの花はえーと、えーと、じゅんけつとか、』 『じゅんけつってなーに?』 『こころがきれいでよごれてないって、ことだって』 『そっか!だからさくらちゃんはこんなにきれいなんだね!』 『そーかな』 『うん!さくらちゃんはきれいで、かわいくて、なずなとなかよくしてくれるからだいすき!花ことばもおしえてくれたし!』 『ほんとう!?』 『なにが?』 『なずなちゃんは、さくらのことすき?』 『うん、もちろんだいすきだよ!』 嘘ではない。けれど、私の放った“好き”という言葉と彼が受け取った“好き”という言葉はこの時、すでに意味が違っていたということに、いまさら気がついて。
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