457人が本棚に入れています
本棚に追加
《SAKURAを立ち上げたのもその子に“さくらがきれいでかわいい”と言われたからで、僕の全てはもうずっと彼女を中心に回っているんです》
《えー、まるでドラマのようなお話ですね!このお話を聞いてその方はとても喜ばれたのではないですか?》
はじめて聞いたよ。何度聞いても教えてくれなくて。そういえばあの日さくらちゃんも言っていたっけ。
『あとは、“わたしをわすれないで”』
『え?』
消え入りそうな声でさくらちゃんが呟いた。
『わすれないで?さくらちゃん、なにかわすれもの?』
『あのさ、なずなちゃん!いまはまだむりだけど、さくらがずっとずっと大きくなって自分でお金もかせげるようになったらそしたら、なずなちゃんになずなの花をプレゼントするから、なずなちゃんのすべてをさくらにちょうだい!』
当時の私は意味なんて分かってなくて、大好きなさくらちゃんが言うことだからと、とりあえず受け入れていた。
『いいよ!』
『ほんとう!?じゃあ、やくそくだよ!ぜったいわすれちゃダメだからね!!』
『うん!』
『大きくなったら、さくらはなずなちゃんをむかえにくるね!』
『うん、やくそく!』
ゆびきりげんまんをした。とても純粋で残酷な約束。
“ぜったい、わすれちゃダメだからね”
“なずな、俺のこと忘れたの?”
昔のさくらちゃんと、今の佐倉さんの言葉が重なる。
《彼女には話していません。覚えていてくれたら嬉しいなという気持ちで会いに行って、結局彼女は覚えていなかったのですが。
こんなに思っているのが僕だけなのが悔しくて、意地悪して思い出すまで粘ってみたものの、呆気なく振られてしまいました。》
《え、そこは言いましょうよ!伝えましょうよ!》
《ですよね、意地張ってる場合じゃないですよね。なので最後の悪あがきでこの番組に出させていただきました。彼女が見てくれていたら嬉しいなと。18年も片想いするくらい、》
最初のコメントを投稿しよう!