「とりあえず俺に愛されとけよ」

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佐倉さんは、たぶん全て分かっていて、聞いているんだ。 「……見ました。正直、全国に向けてなにを言ってるんだって、思いました……しかもあの日、最後って言ってたのに」 「最後だったろ。俺を思い出してないなずなにした最後の質問。今のは俺を思い出したなずなにした最初の質問」 「……屁理屈、です」 「言ったろ俺、諦め悪いって」 そんなに思ってもらえるほどの価値が私にあるとは到底思えないのだけど。 「簡単に消せる思いなら18年も好きでいない。小学生のころの約束なんて果たしにこない」 “大きくなったらなずなの花をプレゼントするよ。迎えにくるから” なずなの花束に視線を落とす。 花束持って初恋の相手に会いに行くって、本当に漫画の中のヒーローみたい。 「本当に佐倉さんが、さくらちゃんなんですね、」 「“ぜったい、わすれちゃダメだからね”そう言って指切りまでしたのにな」 「いや、だってあんなに可愛かったさくらちゃんが佐倉さんだなんて、私の中では女の子だったのに」 「まぁ、そーだよな。でも、それでもムカつく」 「……?」 「俺だけ18年ずっと好きで、忘れられなくて、どうしたらなずなを迎えに行けるか考えて、 会社立ち上げて、商品も作ってこれでやっと迎えにいけると思って会いにいけば忘れられてて、しかも好きな男までいるときた。プレゼントは返してくるし」 意地悪な口調に責められ、なにも言い返せない。 そんなことを言われても、とも思うが約束を忘れていたことも、好きな人がいたことも、プレゼントを返したことも全て事実だ……。
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