「とりあえず俺に愛されとけよ」

7/11
前へ
/97ページ
次へ
「18年分取り返さないといけないわけだから、俺だって必死だよ」 「たしかに佐倉さんのことは考えました、でもそれは」 「いいよ、言わなくて」 「え……」 佐倉さんに遮られた言葉が音にならずに消えた。 “恋ではない。恋愛感情ではない”そう言おうとした。 佐倉さんに会ってから佐倉さんを思う日々は続いた。失恋した私の心はあの日、佐倉さんに救われた。会えばどきどきすることもあった。 でもこれが恋愛感情かと問われれば、正直違うと思う。 「俺だって分かってる。恋愛対象としてなずなが俺のことを好きじゃないことは、分かってる。 でもそれは“ 今 は ま だ ”だろ」 ゆっくりと立ち上がった佐倉さんはくるりとこちらを振り向くと、座る私の前に屈んで膝をつく。 その姿はまるで、王子様。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

457人が本棚に入れています
本棚に追加