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ー実際のところ、ルドルフは天才であった。 女子供合わせても30ばかりの田舎の漁村に、攻め寄せたのは100人を越す屈強な軍人達。  深夜から早朝に漁に出、日が昇る頃に帰る、その日常を繰り返すだけの漁村など、ただ道すがらに襲えばいい。軍人達の目的地は、村の先にある港街だった。  油断している、という意識すらないほどの油断。ルドルフの目は、最初から勝機を捉えていた。  村への道中に、桟道がある。    巨大な岩々が海沿いに集まってできたこの一帯では、人が住む土地も、通れる道もごく限られていた。入り組んだ硬い岩の間に道を切り拓くのは困難であり、海沿いに、海面に浮かぶような桟道を作るのは、当然の選択だったのだろう。小さな漁村に繋がる道はこれしかなく、使う者も稀にしかいない。だからこそ、侵攻する軍隊が隠れて上陸する場所として選ばれたのだ。  最も長い桟道は1㎞程もあった。海に張り出した古びた木組みの回廊の上で、軍勢は縦に伸びる。先頭が中腹に踏み込んだところで、桟道は、解けた。     
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