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待てど
朝起き、両親に挨拶をして朝食をとる…。その後、必ず温室に出向き薔薇を眺める。君が好きな品種の薔薇を温室一杯に咲かせた。
あの日から私はずっと知らせを待ってる。
君が私の故郷へ来てみたいと言っていたから…。
用事が終わったら知らせると言っていたから…。
私は待っている…。
温室内の長椅子で眠る男性に、メイドがブランケットを掛けて静かに出てきた。
「…睡眠薬が効いて眠りました…」
「そう…」
メイドが報告をすると年配の女性は深いため息をついた。
「…またフラッシュバックか…無事に帰ってきたもの…あれではいたたまれない」
側で新聞を読んでいた年配の男性もため息をついた。
「…まだ、一年もたってないのだから…仕方ないですわ…時間が必要だとお医者様もおっしゃってたじゃないですか…」
女性が窓から眼下の温室を見た。
「母は何があっても待ちます…あの子が現実を受け入れるまで…
(………あの子が待っている者が死んでしまったと受け入れるまで…)
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