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井戸からの水は絶えず流れているようで、水面は揺らめき続け、木漏れ日をキラキラと反射して輝いている。
「さてと」
簡単に参拝を済ませ、裏手の少し開けた所へむかう。
役目を終えた地蔵や、近くのバス停で使われていたベンチの残骸などが積まれているその少し奥に、比較的新しい、縦に少し長い直方の石が積まれている場所があるのだ。
そしてその石の両脇には、卒塔婆が4本ほど刺さり、手前には香炉代わりの角皿が、並んだレンガの上に置かれている。
神社の境内の端に、ひっそり佇む彼女の墓。5年前のとある事故に巻き込まれ、彼女は帰らぬ人となってしまった。
当初は卒塔婆を立てただけの物だったのだけれど、誰かが墓石代わりにと、程よい石材を持って来てくれたのだろう。
今となっては、誰が見ても”お墓”と充分に分かるくらいになっている。
線香と果物を供え、しばらく手を合わせる。
仕事は相変わらず転々としていること、安定はしないけど生活に困っては居ないこと、あの頃の仲間とも相変わらずなこと。
そういった大体のことを報告し終えたトコで、そろそろ今日の本題を話しておこう。そんなふうに思った時だった。
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