2.現れたのは

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「ぼーっとしてたかと思いきや、いきなり捲し立てよって。……そんなにその時のことを知りたいか。」 「知りたいというか、知っておかなきゃいけない気がするんだ。」  仮にこのイナリが本当に神様だというのなら、地域のことくらい、充分把握してる可能性はある。  下手すりゃ、町の人たちやミチル自身も気が付かなかったような事さえ、”空からお見通し”とばかりに知ってる可能性さえある。  あの日ここであった出来事の、どんなに些細な情報だとしても。  そんな思いが先に出たのだろう。気がつくと俺は、そんなことを口走っていた。 「ふむ……。ちょっと長くなるかもしれんが、構わんか?」  そうイナリが問いかけてくると、足元をそっと、涼しい風が吹き抜けた。  俺は少し大きく頷いて、ミチルの墓石に目を落とすと、静かにイナリの言葉を待った。 「……あー、画面の向こうのお主(おんし)も大丈夫かの?」 「いきなりそっちへ振るんかい?!」 「すまんすまん、ちと重い話になりそうじゃったし、ここらで息抜きしとかんとな。じゃ、続けるぞ。」 「ったく、神様のくせにらしくないと言うか。ともかく続けて下さい。」  とんだ茶番が入って、思わず気が抜けそうになったけれど、聞いてるあなたも、このイナリちゃんの可愛さに免じて許してあげて欲しい。  俺は改めて静かにイナリの言葉を待った。
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