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「ぼーっとしてたかと思いきや、いきなり捲し立てよって。……そんなにその時のことを知りたいか。」
「知りたいというか、知っておかなきゃいけない気がするんだ。」
仮にこのイナリが本当に神様だというのなら、地域のことくらい、充分把握してる可能性はある。
下手すりゃ、町の人たちやミチル自身も気が付かなかったような事さえ、”空からお見通し”とばかりに知ってる可能性さえある。
あの日ここであった出来事の、どんなに些細な情報だとしても。
そんな思いが先に出たのだろう。気がつくと俺は、そんなことを口走っていた。
「ふむ……。ちょっと長くなるかもしれんが、構わんか?」
そうイナリが問いかけてくると、足元をそっと、涼しい風が吹き抜けた。
俺は少し大きく頷いて、ミチルの墓石に目を落とすと、静かにイナリの言葉を待った。
「……あー、画面の向こうのお主(おんし)も大丈夫かの?」
「いきなりそっちへ振るんかい?!」
「すまんすまん、ちと重い話になりそうじゃったし、ここらで息抜きしとかんとな。じゃ、続けるぞ。」
「ったく、神様のくせにらしくないと言うか。ともかく続けて下さい。」
とんだ茶番が入って、思わず気が抜けそうになったけれど、聞いてるあなたも、このイナリちゃんの可愛さに免じて許してあげて欲しい。
俺は改めて静かにイナリの言葉を待った。
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