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魔法学園では、卒業までに集めた銀貨の枚数でその後のエメラルティ国での階位が決まる。
互いに銀貨を奪い合うか、試験で好成績を収めるか。
学園では日々、生徒たちが切磋琢磨し、銀貨集めに奔走しているのだ。
入学してから数か月で、ドロシーは既に数十枚の銀貨を集めている。
このままいけば、卒業するころには最も成績の優秀な者に与えられる《マスター・オブ・オズ》の称号を貰えると噂されるほどだ。
(せっかく集めた銀貨を渡すのは悔しいけど、これ以上、さらし者にされる方が嫌だ)
残りの銀貨は部屋にある。
屈辱的だが後でこの男に渡そう。
それよりも、今は再び銀貨を集める手立てを考えなければ。
周囲の視線から逃げるように、ドロシーは踵を返して歩き出す。
その背を引き留めるように、ウィリアムが声をあげた。
「もちろん、銀貨は没収する。そして、君には白のオズの命を受けてもらう」
「は? 何言って……!」
ドロシーは立ち止り、振り向く。
その直後、ウィリアムはドロシーの目の前で跪いた。
周囲で成り行きを見ていた生徒たちがざわめいた。
「おい、何のつもりだ」
不審に思い、ドロシーが尋ねるとウィリアムは流れるようにドロシーの手を握った。
「白のオズの権限によって、ドロシー・モーズレイを我が花嫁に迎える」
皇帝が命を下すようにウィリアムは言った。
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