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ドレスを見る目は普通の少女と同じでキラキラと輝いていた。 宝石を映した瞳は潤んでいて、赤い唇から熱いため息が漏れたのが分かった。 どこか艶のある表情に、ウィリアムはドレスではなくドロシーに目を奪われた。 「まさか、あの少女に目を奪われる時が来るとは思わなかったな。――しかし、毎日あんなにしおらしかったら不気味だな」 やはり、いつものドロシーがいい。 単純で、粗雑で、野良猫のように時々爪を立てて。 何より、いつもあのような態度では、悪い虫がついてしまう。 「だが、素敵なファーストレディにすることが、そもそもの目的だったような……。では、これはこれで、一歩前進なのでは。いや、しかし! これでは、学園中の不埒な奴らがドロシーを毒牙にかけるのでは……! お、俺はいったいどうすればいいのだ!」 ウィリアムはとうとう、頭を抱えて悩みだした。 体を屈めて唸り声をあげていると、ノックの音がした。 「――入れ」 ウィリアムは慌てて顔をあげ、動揺を心の底に隠した。 姿勢を正し、平静を装っていると侍女たちが広間に入ってきた。
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